2016年2月28日日曜日

仕事がつまらないと感じている人へ―ワタミの上司に教わった仕事の姿勢


これからお話する内容は、私の上司の話です。私がワタミで働いていた頃、店で使用するパソコンがありました。そこに発信された内容です。

「お客様の喜びは自分の喜びか」こんな話をされ、バカ言ってんじゃないと思い、飲食店に対して否定的な考えを持っていた私の上司が、どのように変わっていったか書かれたものでした。

上司は、出世欲に取りつかれ厳しいだけの人でしたが、飲食店に全力でぶつかって、衝突を繰り返しながらも徐々に考えが変わっていき、最後は「飲食店って素晴らしい」そう思えるようになったという話です。

飲食店を辞めたいと思っている人も、仕事そのものに悩んでいる人も、何かきっかけがあればと思い、ここに紹介します。



 はじめに


私は外食産業に否定的だった。アルバイトとしてワタミで働いていたが、その理由はただお金を稼ぎたかっただけ。別に飲食店が好きで働いていたわけではない。この当時、ワタミで働く上司に言われた言葉がある。
「お客様の喜びは自分の喜びか」
最初に聞いたときは、そんなもん偽善者かバカかどちらかだろう、と思った。でも「何をバカなことを」と思いつつも何故か気になってしまう一言だった。だからこそ、自分自身の目で確かめてみたい、という好奇心も少しだけあったに違いない。私はワタミに入社することにした。

 孤軍奮闘の日々


外食産業はQSCである。「Q=クオリティー」「S=サービス」「C=クリーン(清潔感)」のことだ。これらを向上させれば必ずお客様は増えるといわれてきた。

ワタミに入ってしばらくして、私は店長になった。まずはお客様を増やすため、QSCを向上させようと考えた。だからこそ、部下には徹底的にそのことを指導し「言うことを聞かせてきた」言うことを聞かない人間は腕づくでも「言うことを聞かせてきた」

そのうち言うことを聞かない人間はやめ、イエスマンだけが残っていった。上司がチェックするQSC評価は良いのだが、お客様は増えない。


QSCを高めればお客様に伝わると思い行動し、料理にサービスに、一切の妥協をしなかった。店の清潔さを保つために、自ら泥だらけになって掃除もした。そして、開店から閉店まで指示を出し続けた。

「私語はするな」 
「動きが遅い」 
「何で挨拶をしない」

そうしていくうちに、QSCを向上させるのに部下は邪魔な存在だ、と思うようになっていった。いつしか「お客様がくると思い通りの行動ができない」という思いになっていった。私は、お客様のためにQSCを向上させていたのではなく、QSCのためにQSCを向上させていたのだ。


なぜ私はこうなっていったのか。当時私は、早く課長になりたかった。同期が何人も課長になり、取り残されたくなかった。「外食産業はQSCなんだ。QSCさえ向上させれば課長になれる」そう思っていた。

 ワタミの店長は強くあるべき


日々厳しいだけの私だから、部下であるアルバイトにも社員にも慕われてなんかいない。怒鳴られたくないから従っているだけで、私が怖いだけなのだ。些細なミスをとがめられ、追及されるのが嫌でやっているだけ。私もそれはわかっていた。

だが「私がいないと店のQSCが保たれない」と思っていた。だからこそ言うとおりにさせる必要がある。より怖く、より強い店長でいなくてはいけない。年上だろうと誰だろうと関係ない。駄目なものは駄目。容赦なく怒鳴り散らす日々が続いた。

こんな調子だからか、QSC評価は非常に良かった。だが部下たちは言うことを聞かない。誰もついては来ない。「何なんだ。その態度は」とさらに追い込むしかない。つらい。


私が先頭に立ち指揮を執るが、振り返ると誰もいない。そんな状態が続いていた。時には上司である課長や部長にも食って掛かることもあった。私は孤高の一匹狼を気取っていたのかもしれない。

QSCを追えば追うほど私は孤独になっていった。でも「これは仕事なんだから、一種の修行なんだから、つらいのは当たり前だ。泣き言は言うな」と考え、自分のやり方は変えなかった。


そんなある日、ついに限界を迎えた。課長から異動を命じられたのだ。私と部下との間の溝を見かねての異動だった。月商3000万の売上規模の店から、月商1000万にも満たない店への異動。私は「左遷だ」と思った。

ただ「あんなにQSCにこだわって、誰よりも店いて、誰よりも働いてきたのに何でわかってくれないんだ!」こうした思いは不思議と少なかった。

どこかで部下には申し訳ないとおもっていた。歩み寄ることも「何をいまさら」という思いもあり、そんなことをして彼らに何を言われるのかと怖くもあった。異動を命じられたときも「やっぱりな」という思いが非常に大きかった。こうして私は出世街道から外されたのだった。

 お客様のために行動してみよう


新しい店に異動してみると、そこは本当に小さな店だった。だが「ここから新たな一歩が始まるんだ」というような前向きな思いなどなかった。左遷だと思ったため、店長として失格の烙印を押されたと感じていた。「もう出世など出来ない」「課長にはなれない」まさに追われるように前の店からいなくなった。

新しい店は売上が悪いからお客様も多くはない。私は体力を持て余していた。つまりはヒマだったのだ。左遷されたものの、自分の力には自信はある、そんな状況だった。


何故かそんな時ふと「お客様のために力を使ってみよう」と思った。もう今までのようにQSCにとらわれ、振り回され、気が付けば多くの人間に囲まれた中での孤立、孤独…。

出世欲にとりつかれるほど、周りからは煙たがられた。私に味方などなく、完全に周りは敵だらけの状態だった。これまでの私のやり方は、明らかに限界を迎えていた。
「こんな思いはもう嫌だ」
いくら仕事とはいえ、私は苦しかった。そして一つの思いが出てきた。QSCを追い求めすぎると、お客様に意識が届かないのだろうか。「QSCの向上」は良い言葉だが、いつの間にかQSCの向上は、私が出世するための手段になっていた。だからQSCなどは一旦考えずに「お客様のために」そう考えてみようと思った。

 考えが変わって行動が変わる。習慣が変わる。そして人生が変わる


それから私はさっそく行動を開始した。いらっしゃるお客様全員に名刺を配って挨拶した。
「今日はご来店ありがとうございます。」
「この店に異動してきた店長の○○と申します。」
そして、お客様の特徴をノートにメモした。「○○様は××席にいつも座る」「禁煙の2名様」「最初のご注文は、ビールとキムチ」ノートは、あっという間に真っ黒になった。

お客様のアンケートもいただき、住所付きのものには必ず手書きでお礼状を書いた。こうして私は、お客様と接点を持つように行動を始めた。

以前までは「店長とは管理するもの」「だから私は一歩引いてお客様に接するものだ」と思っていた。この店では、自らが率先してお客様を思い、お客様と積極的に会話するよう心がけた。


すると不思議なことが起こり始めた。私がお客様と楽しそうに会話するのを見て、部下のアルバイトの子達も自然とお客様のことを考え、行動してくれるようになっていた。

当時は「私の言うことが正しいんだ」と部下を押さえつけていたが、すぐに反発され私は孤立した。でも今はどうだ。私が何も言わなくても、当時やってほしいと思っていたことがいとも簡単にできてしまう。その時気が付いた。
「私はただ自分が出世したいがために、QSCの向上という最もらしい理由をつけて、部下や上司を利用していただけなのではないか」 
「そんな自分のことしか考えていない人に、誰がついていきたいと思うのか」
私は、お客様を思い行動している部下たちを褒めることに忙しくなっていった。

 お客様の喜びは自分の喜びだった


そんなある日、私は休憩室で飲食店関連の本を読んでいた。本にはピカピカの厨房の写真が載っていて、「これすごいよな。ウチも負けてらんないな」こんなことをアルバイトの男の子に話した。するとそいつは休憩中にもかかわらず、部屋を飛び出していった。何をするのかと思えば「うおおお!」と叫びながら厨房を掃除し始めた。気がつけば私の店はピカピカになっていった。

そんな店内には活気ある私たちの声がこだました。

「いらっしゃいませ!」 
「ご来店ありがとうございます!」 
「またのお越しをお待ちしてます!」

こんな調子で明るくお客様を迎え続けた。


そして気がつけば私の店は、月商1500万の店になっていた。就任当初の1.5倍である。そんな時、私がアルバイトをしていた頃のワタミの上司の話を思い出した。

「私が、店長になったとき同じアルバイトの人、同じメニュー同じ内装で店長の私だけ変わった。しばらくして店の売上が2倍になった。」

当時はこんなこと信じられなかった。何を嘘を言っているんだ。そんな武勇伝なんて語るな、と思った。話はこう続いた。

「同じ掃除するのも、接客をするのも、お客様のことを考えて行うと伝わり方が違う。ただ作業的に流しているのと、思いと行動に一貫性があるのとでは伝わり方が違う」  
「私たちの仕事は、いらっしゃいませを言うことではない。ただ料理を作ることではない。お客様を思い、大切な人をお迎えする。そんな思いを持って店に立つことだ。」

私は、異動先の店で、この話の本当の意味がわかった。何より大きかったことは「お客様の喜びが本当に自分の喜びになるんだ」それを体感できた。以前まで、そんなことを言う奴なんか偽善者か馬鹿か、そのどちらかだと思っていた。

何で今までお客様の喜びが自分の喜びになることを理解できなかったのか。
それは、私自身がお客様に対して、仕事に対して本気じゃなかったからだ。仕事は自分が出世するためにするものではない。お客様のためにするものなんだ。
この理解が得られてから、本当に店が好きになった。お客様も好きになった。さらに、一緒に働くアルバイトや社員も大好きになった。

 おわりに


こうして私は、喜びをもって仕事が出来るようになった。過去にはあれほど上手くいかなかったことが、あっという間に解決した。「このまま一生店長でいい」本気でそう思った。あれほど早く出世して課長になりたいと思っていた私が、驚きの感想をもつようになった。

こうして考えが180度変わった私だったが、しばらくして何と課長に指名された。課長になりたくて仕方がないときにはなれないのに、もういいと求めないと何故か寄ってくる。人生は思い通りにはならないものなのだろうか。まったくもって人生とは、不思議で、辛くて、だけど楽しい。


---以上---


長くなりましたが、これで終わりです。私の上司の話でした。読みやすくなるように改訂していますが、話の内容は同じです。ワタミ=ブラック企業と眉をひそめる人もいるかと思いますが、新しい気付きを得ている人もいるんですね。大切な事は「どの会社で働くかというより、今いる会社で何をするか」そう思った話です。



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